
生物多様性研究・教育プロジェクト(略称:多様性プロジェクト)の目的と目標
里山(中山間地域)や里海は、細菌類、菌類、原生生物から植物や動物に至るまで多様な生物の生活の場になっています。各々の種(species)には、生活や繁殖に対する種固有の適応戦略が見られます。多くの場合、誰の世話にもならず、という生き方ではなく、他の種類の生物に依存して自己の生活を成り立たせています。その典型が「エコシステム(生態系)」や「食物連鎖」です。
里山や里海で展開される多様な生物の生存戦略(早い話が、生殖生態や行動)を明らかにすることは、基礎研究としての興味をそそるだけでなく、特定の生物の個体数を増やしたり、生物個体の外観(見た目、あるいは「品質」といってもよい。)を改善するという資源管理を進めるための重要なプロセスでもあります。
私たちの目的は、里山や里海で見られる多様な生物の適応のしくみを明らかにし、対象とする生物の個体数を調節する手段を開発することです。
また、都市に住む人々に対し、里山と里海をどのように利用して楽しく過ごせるか、また安全な海の幸や山の幸を享受できるかについて、皆様にいろいろな可能性を提供することを目的としています。
オオアカゲラの子育て。

オオアカゲラの子育て(撮影は亀岡晴秀氏)
<多様性プロジェクトの活動>
里山の自然を楽しむ。
ブッポウソウの研究と中山間地 振興への活用
里山・里海の生物資源を利用した製品づくり:生物資源管理センターから

田舎に行けば、雑木林や小川が見られ、民家の周囲には水田や畑が広がっています。里山とは、そんな風景のところです。昔ながらの日本の田園風景です。
しかし、実際には現在の田園風景は、昔とは比べ物にならないほど生物多様性が減少していると考えられます。新しく開発される多種多様な農薬は、害虫だけでなく、同居している昆虫類の生存にも大きな影響を及ぼすからです。
農薬を使わなければ、稲や作物が育たないというのはその通りです。農薬を使えば、労働量を減らし、見かけ上は高品質の製品(米やトマト)の収量を大幅に増やすことができるので、それを絶対的必要条件にしてしまっただけです。
問題は、そういうやり方で製品化しなければ、誰も買ってくれない社会になっていることです。見かけ上きれいなものは高品質とみなされ、よく売れますが、残留農薬の危険性、特に長期にわたる危険性、はほとんど研究されていません。
どういうものを選んで食べればよいかを知るには、まず自然を良く知ることです。スーパーでは、見た目がきれいで、形も一様の商品でないと売れません。しかし、実際に生産現場を見ると、見てくれの良い商品は、危険と隣りあわせで生産されていることがわかります。モンシロチョウの幼虫の食痕が多少残っているぐらいの葉っぱの方が、むしろ安心できます。
自然体験は大変楽しいものです。また自然を体験すると、食と商品に対する価値観が今までとは違ってきます。
ブッポウソウ(Eurystomus orientalis)は、アジア大陸では割と普通に見られる野鳥ですが、日本列島に渡来する個体群(亜種ではない)は、一時期には絶滅寸前に追い込まれました。
ブッポウソウは、巣箱を設置し、自然から多少とも「隔離」(isolate)する程度で、個体数が増加することが判明してから、個体数が増加してきました。ブッポウソウのように、巣箱で繁殖する野鳥は、行動を容易にモニターすることができ、また個体数の変動も把握できます。しかも、個体数が増加してきたのだから、行動や生態を研究するのに絶好の対象(材料)になります。
日本の野鳥生態学(自然史科学)は、国際的に立ち遅れています。愛好者は多いのですが、生態学・行動学の訓練を受ける場(大学教育)が少なく、専門の研究者が育ちにくい現状があります。日本はまだファーブルのような感性を持った人たちは疎んじられることが多いのです。
また、自然の保護についても、研究という基礎がないから、信念や思い込みの強い保護論になったり、開発の強い圧力に容易に折れてしまうことになりがちです。カブトガニの生息場所の消滅などはその良い例でしょう。幸いにしてブッポウソウの生息場所は、人間と共生できる里山です。ブッポウソウの研究が、多少なりとも自然史科学の進歩に貢献できれば幸いです。
さらに、ブッポウソウの存在とは切り離せられない「横山様」(岡山県吉備中央町下土井)や、ブッポウソウをいつどこで見られるのか、等についての情報も得られます。詳しくは下記をクリックしてご覧下さい。

里山と里海には、多様な生物資源が存在します。しかし、豊かな自然は、多種多様な生物が互いに生存を競い合う結果として成り立っています。だから、ある特定の生物の個体数を増やしたり、品質を向上させるためには、自然そのままの中では非常に難しいのです。
自然の中では、周囲に毒を撒き散らすか、特別な繁殖戦略を持たない限り、一人勝ちは難しいのです。アオサ(Ulva)、タケ、セイタカアワダチソウなどは、結構一人勝ちしていますが、希にはそういう種類の生物もいます。
ではどうすればよいのか?里山や里海において、高品質の製品を量産するためには、一にも二にも、対象とする生物をいかに自然から「隔離できるか」にかかっています。
多くの場合、多少隔離した程度では、他の種(多くの害虫)の格好の餌食にされてしまいます。かと言って、農薬を多量に使って全部排除するのは、将来に対する危険性が高すぎます。田んぼの中だけでなく、周囲の畦にも大量の農薬を使用して育てた米は、実際に現場を見ると、ちょっと怖いものがあります。
特定の資源生物を育成するためには、まず自然から隔離を考えることです。完全に隔離するには莫大な費用がかかるので、現実的には「できる限り」ということになります。捕食者、侵入者(雑草、昆虫、細菌など)を防ぐことができれば、取り除く手間を大幅に削減できます。
次に、何がどのように寄生するかを調べて、それらが近づけない方法を考えるとよいでしょう。品質はかなり向上しますし、散布する農薬も少なくてすみます。
品質の良い商品ということをもう一度考え直してみてはいかがでしょうか?
亜熱帯域の自然を楽しむ。
-西表島を中心に-
干潟を楽しむ。
夏緑樹林帯の自然を楽しむ。
‐大山(鳥取県)を中心に‐



西表島は、沖縄県の中では沖縄本島に次ぐ面積を持つ島です。今ではほとんどの人は知らないかもしれませんが、太平洋戦争が終わるまではマラリアの発生地でした。太平洋戦争時には、波照間島や黒島から移住した多くの人々がマラリアで死亡しています。豊原の海岸にある「忘れ勿石」の碑には、不幸にして命を落とした人々の氏名が刻まれています。
現在は、西表島ではマラリアは発生していません。マラリア原虫(原生生物)を媒介するハマダラカも激減しています。サキシマハブは、小雨が降って暖かい日にはよく見られますが、沖縄本島に生息するハブほど攻撃性は高くないので、注意して作業をすれば噛まれることはありません。(私はサンダル履きで、踏みつけそうになったことが数回ありますが、いずれも直前で気づいて難を逃れました。)
西表島は、他の島々と同様にサンゴ礁(バリア・リーフ)に囲まれており、大潮の干潮時にはリーフの縁まで歩いて行けます。また、原生林に覆われた山々(300-400mの高さ)が連なっているために、水量が豊富で、河口が発達しています。
西表島には、琉球大学附属の「熱帯生物圏研究センター・西表実験所」があるので、研究には非常に便利です。もう何十回も西表島に行き、実験所を利用して河口域や潮間帯の生物の研究をしてきました。ここでは西表島を中心に、亜熱帯域の自然をご紹介いたします。
上の写真は、「Jr. サイエンス」か何かのイベントで、笠岡湾の干潟に行き、干潟の生物を採集しているところです。笠岡湾は、かつては(といってもわずか50年前のことですが。)カブトガニの生息地として、毎年何十万匹のつがいが干潟に現れて産卵をしていました。しかし、干拓事業とともに著しく富栄養化(eutrophication)が進行し、カブトガニは消え、またタコ、タイラギ、ワタリガニ(ガザミ)等も以前とは比較にならないほど、減ってしまいました。市街地に近いところでは、ヘドロが厚く堆積して、表層に住む生物しか見られませんが、写真のように外湾(瀬戸内海)に近いところでは、結構いろいろな生物、特に穴を掘って生活する生物が残っています。マテガイ、ゴカイ、アナジャコ、イシガニなどを採集しているところです。
笠岡のこの干潟の少し内側には、川があります。川の南側には山があり、斜面の土手には多くのアカテガニが生息しています。アカテガニはもともと、河口域には驚くほどの数の個体が見られました。しかし、道路ができ、車がたくさん通るようになったために、抱卵メスが、産卵に川岸や海岸に下るときに轢かれてしまい、どこの生息地でも個体数が激減してしまいました。笠岡湾には、この場所だけですが、毎年まだたくさんの個体を見ることができ、産卵の観察会も何回か行いました。
その他、竹原(広島県)の干潟で行われた実習(現代GPという教育プログラム)や向島臨海実験所(広島大学)で行われた(私たちの)臨海実習風景などもご覧いただけます。
中国地方は、植生(vegitation)から見るとアラカシやスダジイ、クスノキ、モミなどの常緑広葉樹林が主体になっています。このような特徴から「照葉樹林帯」と名づけられています。里山の多くは、照葉樹林帯に見られます。
一方、県北部の脊梁山地(鳥取県との境)には、ブナやミズナラ、イタヤカエデ、ナナカマド、トチノキなどを中心とした落葉広葉樹林が広がっています。別な呼び方では、夏緑樹林帯とも言います。
中国地方の夏緑樹林帯の代表格は、大山(だいせん)です。大山や近くにある烏ヶ山(からすがせん)には、ブナの自然林があり、照葉樹林帯では見られない多種多様な生物に出会うことができます。
大山もまた何度も行きました。今は岡山自動車道から米子自動車道を利用すれば、岡山市内から1時間半ぐらいで大山のふもとに着きますが、以前は国道を通ると4時間ぐらいかかったことを覚えています。
しかし、大山は時間をかけて行くだけの価値は十分あります。
大山と並んでよく行ったのが、鳥取県と岡山県の県境にある辰巳峠です。今は道が広がってしまって、峠では採集できませんが、道を作っているときには、燈火採集をすれば、今まで見たこともないような昆虫類がたくさん集まってきました。そんなことも紹介しています。
多様性プロジェクトのオリジナル商品
NPO法人の活動を続けて行くためには、自分たちで製品を作り出し、販売して活動のための資金を捻出して行く必要があります。今のところ、やっと品質に自信が持てるようになってきた製品は、原木シイタケである。
原木シイタケは、コナラやアベマキの木を切り、それにシイタケ菌(菌糸体)を植えつけて寝かせると菌が増え、何かの刺激(特に温度の低下)に反応して子実体が形成されてできる。
子実体の形態形成のしくみはほとんどわかっていないと思うが、とにかく刺激があると固有の形態ができあがる。
一方、子実体は自然の中に置くとすぐに害虫に食害される。どのような昆虫類によって食害を受けるか、食害をどう防ぐかを調べているところである。
柄(funiculus)に侵入するのは、ガの幼虫(シイタケズコガだけではなさそう)が多い。表面を食害するのは、小さいキノコムシ(ケシキスイかもしれない)である。一番怖いのは、キノコバエの幼虫(ウジ)である。林床においてある原木を調べて回った結果では、どこもかなりの被害を受けている。特に春から夏にかけては、激しい食害を受け、とても出荷できない状況になる。
試行錯誤してこれらの昆虫類の被害を大幅に軽減する方法を開発しており、最近少し効果が現れてきた気がするが、来年の春が正念場になるだろう。
その他、ブッポウソウグッズとして、絵葉書や絵皿、マグカップなども作成した。
来年は、カブトムシやクワガタムシ、メダカの変異体(品種)を、オリジナル製品として加えられるだろう。
さらに、ブッポウソウ米の生産も行われている。私はもうできないが、低農薬で生産される米で、他の地域の米と比べて味はすごく良いと思う。近いうちにこのページで紹介してみたい。
現在開発中の製品、これから手がけてみたいこと

浅原宏務氏の撮影
製品というと、工場で生産されるイメージがありますが、人の手が加わってできるものを、「製品」と呼んでいます。ブッポウソウも立派な製品のひとつと考えています。巣箱添加という単純な隔離方法で、そこそこ個体数が増加するのですから、自然の中で飼育するのは楽だといえます。
一方、採集して飼育するのは、そもそも許可が下りませんが、できたとしても相当に難しいと思います。自然の中で育てる方が良いのです。そして増えてよかったと思うだけでなく、積極的に利用することを考えるべきです。ブッポウソウは、行動学、生態学等の研究に利用できます。また、自然教育の教材としても大いに利用価値があります。
このような視点で、現在増殖(養殖)を考えている生物は、アカテガニ(Sesarma haematocheir)です。そのうちに多様性プロジェクトのホームページで紹介します。アカテガニの研究は長いことやってきました。
また、最近少しワタリガニ(ガザミ:Portunus trituberculatus)の飼育を手がけました。その経験から、アカテガニの幼生(zoeas and megalopae)を飼育するのは、多分比較的容易です。しかしながら、問題はアカテガニのすめるハビタットはあっても、産卵ができない(道路ができて、車がいっぱい走っている)ことです。
カニ類は、成長するまでに時間がかかります。成熟するまでにワタリガニは半年、アカテガニは2年(あるいは3年)ほどかかります。どちらにしても、高密度で長期間飼育するのは大変手間がかかるので、今のところは稚ガニ(juvenile crabs)になったら野外に放して、自然の中で大きく育つのを待つのが得策です。
アカテガニも増えれば、ふ化機構(hatching mechanism)を中心に、研究や自然教育に大きな利用価値があります。売れるものばかり作ることが社会の役に立つ訳ではありません。だから本プロジェクトが貧乏になるのは仕方ありません。しかし、気持ちだけは、貧乏にならないよう頑張らないといけません。
会員募集
本プロジェクトでは、生物多様性の把握と利用を推進するために、下記に示すグループを設けて活動しています。それぞれのグループごとのホームページも掲載予定です。
<ブッポウソウ行動研究グループ>
オーガナイザー:中堀清
<ブッポウソウ管理グループ>
オーガナイザー:成田和彦
<クワガタ・カブト研究グループ>
オーガナイザー:座間味真
<「ブッポウソウ米」生産グループ>
オーガナイザー:日名義人
<自然教育開発グループ>
オーガナイザー:森下美穂
<里山振興推進グループ>
オーガナイザー:中山良二
<生物資源開発グループ>
オーガナイザー:三枝誠行
<ニホンミツバチ研究グループ>
オーガナイザー:中堀清
<干潟・水系研究グループ>
オーガナイザー:増成伸文
新入会員は、上記のグループのひとつ、もしくは複数のグループに加わり、グループリーダーや会員の下で、それぞれの研究、開発、教育を実践することができます。
小学生や中学生でも会員になるメリットはあります。クワガタカブト研究グループに加わり、いろいろな種類の昆虫、特にクワガタムシやカブトムシをいつごろどこの林で採集できるかも知ることができます。採集は両親が面倒を見てください。採集だけでなく、自分の力で幼虫を育ててみるのも面白いです。
また、メダカグループに入り、変異体(品種)を育ててみることも面白いと思います。
父兄の方々や一般の方々は、本プロジェクトの活動を支援していただく会員になっていただくことも歓迎です。インターネットを通じて、本プロジェクトの活動や開発中の製品情報等を随時お伝えします。
入会のご連絡は下記の住所にお願いします。リストに上がっている理事の誰でも構いません。
入会時には、入会金は1,000円と、個人の場合には年会費は3,000です。また、家族会員の入会金は、1,000円と年会費は5,000円です。入会金は、入会時にのみ納めてください。振込先等は、追ってお知らせいたします。
下記の企業様からご支援をいただいております。

イカの赤ちゃん。西表島にて
(株)富岳(とみおか)商店
マッシュルーム・キノコ類の販売と配達
TEL: 0425-60-9661
FAX: 0425-60-8900
会員のHPやブログへのリンク


海産カニ類のゾエア幼生:種類は不明だが、3種類はいる。(河口のマングローブ域採集されたので、シオマネキ類やヒルギハシリイワガニなどのゾエアと思われる。)他にカラヌス(橈脚類)1匹。
会員の方々のホームページやブログにリンクすることができます。生物多様性研究・教育プロジェクトの活動方針に合致する活動について、リンクを希望される方はお申し出下さい。

